えいちゃん(さかい きよたか)
えいちゃんのぶろぐ

戦争ものの大衆小説を著し、今はもう忘れさられたような作家、棟田博の「サイパンから来た列車」を読む。二編収められていて一つは小品の「サイパンから来た列車」、もう一つは中編の「ポッポ班長万歳」。こてこての戦記文学ではなく戦争を背景した淡い笑い、ユーモアと悲哀の涙を誘う珠玉の作品が二つで、かのオー・ヘンリーの名作を思い起こさせる。ぼくは10年後の日本はどこかの国と戦争でもしているのではあるまいかと、昨今の風潮に悪い予感をおぼえ、どんな時にも、どこか善良に生きたいと心貧しくも願いつつ、こんな本に手が伸びてしまう。その悪い予感がはずれたらいいと思い、このような読書が悪魔祓いのまじないのようでもあると感じてしまう。

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無題
とても魅力的な記事でした。
また遊びに来ます!!
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