えいちゃん(さかい きよたか)

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ぼくの大好きなフォーク・シンガー、友部正人さんのホームページを見ていたら、友部さんが生涯、見た映画の中でも5本の指に入ると書いてあったマルガレーテ・フォン・トロッタ監督の「ハンナ・アーレント」を横浜黄金町の映画館「ジャック&ベティー」に見に行った。

何かとても考えさせられるような、そして、そこから勇気をもらうようないい映画だった。

ハンナ・アーレントという政治哲学者と彼女がザ・ニューヨーカー誌に寄稿した「イェルサレムのアイヒマン―悪の陳腐さについての報告」の引き起こした筆禍事件を主軸にして、第二次世界大戦のユダヤ人ホロコーストを生きのびた孤高のペンだけを武器にして戦う強い女性が、描かれている。

さて、その呵責なき論考で筆禍を引き起こした「イェルサレムのアイヒマン―悪の陳腐さについての報告」の中のアイヒマンとは誰か? 国家社会主義ドイツ労働者党、いわゆるナチスの親衛隊の幹部でありユダヤ人ホロコーストの最高責任者のアドルフ・アイヒマンが戦後の1960年に逃亡先のアルゼンチンでイスラエルの諜報機関、モサドに捕らえられる。この映画の中で、そこだけは実写のモノクロームでドキュメンタリーのまま、描かれるのだけど、そのイェルサレムでの裁判のシーンは気分が悪くなるほどのリアルなのだった。そのアイヒマンをアーレントは「悪の陳腐さ」と書いたのだけど、ぼくが連想したのは、20世紀末の日本でのオーム真理教の悪の陳腐さ、今世紀になってからの身近な日本の民主党や自由民主党、新聞、テレビ、電力会社、その他の会社組織、労働組合、ありとあらゆるところに巣をはる悪の陳腐さなのであった。翻っていえば、ぼくには、答えは見つからず、まだ探索中で、提出しなかった宿題が忘れたころに、追ってくるようなのだ。それは何なのだろう?

映画にもどり、このニュー・ジャーマン・シネマの気鋭女流監督の撮り上げた「ハンナ・アーレント」は、武器も持たずに戦う今の日本の女性たちにエールを送る、そんな映画のようでもあるようなのだ。そして、こんなにたくさん煙草を吸うシーンが出てくる映画は初めて見た。煙草を吸う姿がかっこいいハンナでもありまする。

http://www.cetera.co.jp/h_arendt/
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