えいちゃん(さかい きよたか)

えいちゃんのぶろぐ

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ヴィム・ヴェンダーズ監督の『PERFECT DAYS』を見ました。ヴィム・ヴェンダーズ監督以外、協同脚本を含めて多くの日本人スタッフによる映画は、エキゾチックに流されずに、ありのままの今の東京をとらまえているように思いました。それにトイレ清掃員を演ずる役所広司さんがとてもいい。トイレ清掃員の人生が淡々と流れていくけれど、それが美しい。役所広司さんはこの映画でカンヌ国際映画祭で主演男優賞を受賞しています。脇役の抑えた演技も素晴らしい。石川さゆりさんが小料理屋のママを演じていたりしていて、ブルースの名曲「朝日楼」を歌ってくれています。

役所広司さんの演ずる主役の清掃員の名前が「平山」で、これはヴィムが勝手に師匠としているという小津安二郎監督の映画の中で笠智衆の演ずる娘を嫁に出す父親の名前「平山周吉」からとられているのではないか、という発見もうれしい。そして、映画もおしまいになり、映画館から出て、いつもの街を歩いていると、その街が愛おしいような、いつもの街と違った街に見えたりしました。ふと、映画のいろんなシーンも思い浮かばれ、目頭が熱くなります。あー、東京を舞台にヴィム・ヴェンダーズの映画が帰ってきたんだ。

PERFECT DAYS 公式サイト
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『大人の遠足BOOK 駅からウォーキング 関東』の「多摩森林科学園と多摩御陵」をたよりに散歩しました。多摩御陵こと武蔵陵墓地には大正天皇、その妃の貞明皇后、昭和天皇、その妃の香淳皇后が葬られ、祀られておられるということです。最近、作家で昭和史研究科の平松周吉さんの本『小津安二郎』で小津安二郎監督の『東京物語』の主人公の夫婦は行幸される民間の天皇陛下と皇后陛下であるのかもしれないという説にぼくは驚き、なぜか首肯してしまいます。近頃は天皇に祀らう元号などは廃止すべきだという意見もありますが、国歌も歌わず、国旗も掲揚しないぼくですが、元号は残すべきだとも思っています。国歌も国旗の日本らしく感じませんが、元号は日本らしい。合理性とかなんとかで伝統は絶やすべきではなく、しかれども、国家も国旗も伝統ではないように思えてしまうのです。日本をお守りください。さて、多摩御陵は広く、静かで、数人の人と、数人の警察官が歩いているのみでした。この散歩で読んだ俳句が三つ。

 落葉無き玉砂利の道風清む

 冬杉の森の陵墓に頭垂れ(頭:こうべ)

 一本の寒椿青い空の下
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フィンランドの名匠、アキ・カウリスマキ監督が映画の力を再び信じて、引退宣言を撤回して、帰ってきたようなのです。カウリスマキ監督の『枯れ葉』を見ました。アキ・カウリスマキ監督は、引退の最中、おれはやはり、尊敬する小津安二郎の何分の一も映画を撮れていないと自分を嘆き、『枯れ葉』の男の主人公のごとく、飲んだくれていたのかもしれません。

映画の舞台はラジオからロシアがウクライナに侵略し、病院を爆撃しているというニュースの流れるヘルシンキの町で、犬を連れた女の主人公は映画そのもののアナロジーかもしれないのは、ここでは明かすことのできない最後のセリフがあるからなのです。アキ・カウリスマキ監督のこの映画についての弁。

「取るに足らないバイオレンス映画を作っては自分の評価を怪しくしてきた私ですが、無意味でバカげた犯罪である戦争の全てに嫌気がさして、ついに人類に未来をもたらすかもしれないテーマ、すなわち愛を求める心、連帯、希望、そして他人や自然といった全ての生きるものと死んだものへの敬意、そんなことを物語として描くことにしました。それこそが語るに足るものだという前提で。

 この映画では、我が家の神様、ブレッソン、小津、チャップリンへ、私のいささか小さな帽子を脱いでささやかな敬意を捧げてみました。しかしそれが無残にも失敗したのは全てが私の責任です。」

アキ・カウリスマキさん、戻ってきてくれて、ありがとう。

映画『枯れ葉』公式サイト
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中堅のぼくの大好きなもっともあぶらの乗りきった二人の咄家、春風亭一之輔師匠と古今亭文菊師匠が出演するというので、上野の鈴本演芸場に馳せ参じました。

寄席が始まり、しばらくして、三味線と浮世節の立花家橘之助姉さんの後の桃月庵白酒師匠の「代書」あたりから笑いのグルーヴに会場はつつまれはじめておりました。そして、中入りにはいり、再び幕が上がり、ニックスの姉さん二人の漫才の後、江戸衆の呑気で純朴な笑いの世界に突入してゆきます。古今亭文菊師匠の「親子酒」、春風亭一朝師匠の「湯屋番」の定番に笑い、林家楽一師匠の紙切りでほんわかして、春風亭一之輔師匠の「富久」でめでたくしまいとなりました。「富久」で大笑いながら、その噺にちなんで、おいらも年末宝くじかなんか、当たるといいなとかって思ってしまいます。嫌なことばかりの世の中ではありますが、落語は残された心のオアシスです。
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伊豆半島をドライブして旅をしました。伊豆長岡の韮山反射炉、修善寺、いつもの夕日の町、松崎。松崎町では奇麗な夕日が見れませんでしたが、この静けさに心洗われますな。読んだ俳句が五つ。

 分離体続くよ続く寒椿

 反射炉は冬徳川家夢始末(徳川家:とくせんけ)

 冬の午後いつも松崎静かなり

 曇り空見えぬ夕日に冬惜しむ

 木枯しの吹かぬ鈴の音夢なのか(音:ね)

修善寺で御神籤をひいたら、大吉でした。

「運勢大吉

 災害は自然に去り、よい事があつまります。
 目上の人の助けによって喜びごとはふえます。
 おこないは正しくすることです。
 
 第11番
 おみくじ
 
  「言」
 もし、真の自由を求めようとするならば、
 心中の奴隷をとりのけることから、はじめねばならぬ。」

ゆめゆめうたがふことなかれ
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東京国際映画祭で見逃した小津安二郎監督の『風の中の牝雞』を渋谷のルシネマで見ました。

1948年制作のこの映画での東京の景色を見ながら、ぼくは、日本は東京や神戸、ありとあらゆるところに雨霰と爆弾をアメリカに落とされ、ついには、広島と長崎に原子爆弾まで落とされて負けたんだと思う。小津自身、失敗作と認めたこの映画は、没後、評価を高め、『スパイの妻』の監督、黒沢清さんは、小津映画の最高傑作だと評価していました。この『風の中の牝雞』の後、小津安二郎は日本に回帰してゆき、『晩春』を撮ることになるのは、ぼくは痛いほど分かる。佐藤忠夫のこの映画についての批評を引用します。

「「敗戦で日本人は娼婦のごときものとなった、しかしそれでも、空き地で弁当を食べる素朴さは保持しようではないか」というのが本作に込められたメッセージである」

ジョーン・メレンの批評も引用したい。メレンは田中絹代の演ずる時子が守ろうとした子どもの名前の「ヒロ」が天皇の名前と同じであることは偶然ではないとし、以下の説をとなえる。

「彼女は日本人の生活のすぐれた点を守るために身を売ったのである。小津は日本人に向かって、すぐれた点、つまり占領によって汚されることのないと彼が信じる日本人の生活の貴重なものを守るために、新しい社会を受け入れるべきだと語っている」

翌年、無声映画の時代から映画を撮り続けてきたある日本の映画監督によって、フィルムという武器のみで、文化という血をめぐる戦い、日米映画決戦が挑まれる。それは、小津安二郎監督の紀子三部作を含む『晩春』、『宗方姉妹』、『麦秋』、『東京物語』。

さて、1ヶ月以上続いたぼくの小津映画を劇場で見る祭りももうおしまい。残業をしない小津組の監督の午後5時の言葉が聞こえてきそうです。

「これからはミルクの時間だよ」
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今日は鎌倉芸術館で小津安二郎監督の映画『東京物語』と『秋刀魚の味』を見ました。

『東京物語』の上映の後、映画監督の濱口竜介さんが登壇し、『東京物語』の映像の反復、ずれ、崩壊ということを軸に記号論的分析を行っておられ、圧巻でした。濱口さんの分析に首肯しつつ、ぼくは小津安二郎は映画という技法を持った物語の鬼でもあったとも思いました。

『秋刀魚の味』の上映の後は、岩下志麻さんが登壇され、小津安二郎の思い出話。岩下さんは小津の人柄をとてもやさしくて、声を荒げるようなところを見たことがないとおっしゃっておりました。その半面、演技には厳しく、100回、テストを繰り返し、朝に始めた一シーンの撮影が夕方にOKになるということもあったそう。その次の日、岩下さんは小津に食事に誘われ、小津は志麻さんに、人間というのは悲しい時に悲しい表情をするものでもないんだよ、人間の感情はもっと複雑なんだよ、と言ったということでした。やさしい映画の鬼。

さて、今日は小津安二郎の120年を迎える生誕祭であるとともに、没後60年を迎える日でもあって、ぼくは、おっちゃんこと小津安二郎の戦後のベスト5の映画を考えて、発表してみることにします。

1. 東京物語
1. 秋刀魚の味

同列1位はこの2つの映画とします。言わずもがなの親子の別れを描いた映画『東京物語』と『秋刀魚の味』は、この前、亡くなった坂本龍一さんもベストにあげておられました。この作品の系統には、他に『晩春』、『麦秋』、『彼岸花』、『秋日和』があります。

3. 東京暮色

現代の映画に通じるような小津映画のもう1つの流れをなす中の傑作であります。この作品の系統には、他に『風の中の牝雞』、『宗方姉妹』、『早春』があります。

4. 浮草

二代目中村鴈治郎を主演にした怪作です。『浮草』での中村鴈治郎と京マチ子は本当にかっこいい。この作品の系統には、他に『小早川の秋』があります。

5. 長屋紳士録

戦前の流れをくむ憂いも含むコメディーです。この作品の系統には、他に『お茶漬の味』、『お早う』があります。

どうでしょう? ご参考になりましたでしょうか?

ぼくには小津安二郎の映画は何度見ても面白い。ドイツの巨匠、ヴィム・ヴェンダーズも言っておりましたが、小津安二郎の映画は汲めども尽きないミステリーのようでもあります。
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プロフィール
HN:
えいちゃん
性別:
男性
職業:
S.E.
趣味:
音楽
自己紹介:
音楽を演奏したり聴いたりするのが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。
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