えいちゃん(さかい きよたか)
えいちゃんのぶろぐ

去年のノーベル文学賞作家である韓国のハン・ガンさんの著した『少年が来る』を読んだ。1980年の光州事件を取材した小説である。光州事件とは当時の韓国の大統領であった朴正熙の暗殺に端を発し、クーデターを起こした全斗煥による全羅南道の光州での民主化運動を弾圧し、虐殺をし、多くの死者を出した事件。韓国の人たちにとってこの事件が起きた5月18日は忘れられない日となった。
光州事件といえば、ぼくには思い出すこともある。当時、高校生であったぼくは、パンク・ロックが好きで、当時、日本のパンク・ロックやニュー・ウェイブ派のロックのコンサートをしていた法政大学の学生会館のホールに何度も聞きに行っていた。そこで「光州ヴァイブレーション」と呼ばれるコンサートが行われ、光州での民衆の蜂起や軍の介入、おびただしい虐待を記録した映画が極秘裏に輸入され上映されたのだった。当時、朴正熙の暗殺後、戒厳令と情報統制により韓国国内で何が起きているのか、まったく外国では分からない状況であった。若いぼくは、石を投げながら、兵士に撃たれ、ピース・サインをする貧しい服装をした韓国の学生に血が騒ぐようなシンパシーを感じつつも、衝撃的であった。ロック・コンサートも行われ、リザードをバックにした白竜のレゲエのリズムの「光州シティ」も、ものすごくかっこよかった。そのころからずっと、おれは韓国や在日(在日韓国人や在日朝鮮人)のシンパよ。
さて、『少年が来る』にもどり、この小説には凄惨で、かつ残酷で、複眼で語られるの物語の中に詩の美しさも輝いている。ハン・ガンさんはこの小説を書くために何年間も調査と現場取材し、悪夢にうなされたという。この小説の訳者である井出俊介さんの「作者あとがき」を引用し、絶賛し、推薦し、この項を了とします。
作家は透徹した視線で、この事件の背後にある人間存在の引き裂かれた二面性―神性と獣性、崇高さと残酷さ―を凝視している。人間が併せ持つ不条理への不信を克復しないままでは前に進めないという切実な思いが、この小説の行間からひしひしと伝わってくる。
少年が来る (新しい韓国の文学 15)

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プロフィール
HN:
えいちゃん
性別:
男性
職業:
S.E.
趣味:
音楽
自己紹介:
音楽を演奏したり聴いたりするのが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。


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