えいちゃん(さかい きよたか)

えいちゃんのぶろぐ

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津島佑子さんの真新しい小説「ヤマネコ・ドーム」を読了した。ひさしぶりに本気の小説、本ものの文学を読んだ気がした。主人公たちは米兵と日本人の間に生まれたホームなどとも呼ばれる施設育ちの子どもたちで、彼らが先の大戦の敗戦から2011年の東日本の震災までを自由にブルーズを歌いながら、世界中を旅して駆け抜ける、ポリフォニーの語りもの。

施設の子どもというとキース・リチャーズと並ぶ日本の最高のロック・ギタリストの山口冨士夫さんもそうなのであったのを思い出した。そして、この小説は同時代を並走して、先に逝ってしまった小説家、中上健次や立松和平に捧げられているような気もした。津島さんのローレン・バコールのようなしゃがれ声で言う、あなたたち、ずるいわよ、さっさと先に逝ってしまてって、今、日本は恐ろしい地震とかおっかない津波とかお化けみたいな原発で大変なことになっているのよ、という声が聞こえてきそうだ。

タイトルの「ヤマネコ・ドーム」はエニウェトク環礁のルニット・ドームからインスパイアされているものと思われるのだけど、津島さんはこの小説の最後の一頁でこう解説している。

「アメリカの核実験はビキニ環礁だけではなく、エニウェトク環礁も四八~五八年にかけて行われ、そこに住んでいたひとたちも強制移住させられた。しかし、ここではアメリカ軍による除染作業ののち、八○年、住民たちは帰島が許された。戻ってみれば、いくつかの島々は核実験によって消え失せ、ルニット島には除染作業で生じた膨大な汚染物質を集めた「ルニット・ドーム」なるコンクリートの巨大なドームが作られていた。その周囲にはマーシャル語と英語で、「危険 近づくな」と記された看板が建てられたがニ五年経った次点で、すでにその文字は薄れて読みにくくなっていた(竹峰誠一郎氏の報告による)」






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日倉士歳朗さんの弟子になって、今、聴いているのは日倉士さんの最新アルバム"Steel Made With Respect For the Sacred Steel Masters"。荒々しく繊細でソウルフルだなどとぼくが言うのもおこがましく素晴らしい。我が家のCDターンテーブルにヘヴィー・ローテーションしています。

ゴスペルやブルーズを日倉士さんは日本語や英語で歌っているのだけど、その無骨な歌からぼくが思うのは、Blind Willie Johnsonの東の島国に根を生やした正嫡、などと言うのも、やっぱりおこがましく、このファンキーな音楽をみんなに紹介したいだけなのです。万歳! Steel Master Toshirow Higurashi!

さて今夜もギターをオープンDチューニングにして、瓶の口を指にはめるぞ。ギュイ~ン・・・




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町田市立国際版画美術館の「反骨の画家 利根山光人展 -バイタリティを求めて-」を見た。メキシコ、日本、スペイン、インド、、馬や牛、ドンキ・ホーテ、戦争と色々なテーマを変遷しながらも、爆発しお祭りしているおびただしい数の版画を見た。あぁ、情熱の命の輝きです。利根山光人の芸術の方向を決定づけしたかのようなメキシコ渡航なのだが、そのメキシコについて、このように書いてもいる。

「メキシコは革命を通過しながらも至る所に矛盾が露出し、さまざまな人間の顔であふれている。メキシコは人間生活の原型が至る所に露出していて、不思議にも今まで見えなかったものが次第に見えてくる」

フリーダ・カーロのメキシコはロシアの革命家、レオン・トロッキーの没した場所でもあって、そのフェスタは日本の岩手の宮澤賢治の愛した鹿踊りに古層においてつながっているらしいのだ。メヒーコ、万歳!

そこで、ぼくの歌う「メキシコの山」をメキシコ賛、利根川光人賛として、僭越ながらも自らここに引用させていただきます。

「あの高い山に登れ
あの高い山に登れ
あの高い山に登れ
リュック・サックにブルーズを詰め込んで

てっぺんまで登れ
てっぺんまで登れ
てっぺんまで登れば
ごきげんなものがいっぱいあるぜ

そりゃああの娘はいいやつさ
どこまでもおいらに意地悪するぜ
キリマンジャロを越えて ヒマラヤの峰を渡り
あのメキシコの山の向こうまで行くぜ」

反骨の画家 利根山光人展  ―バイタリティーを求めて―
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町田市鶴川「あとりえう」でたくさん畦地梅太郎さんの版画を見て来ました。住宅街の中のちいさな小屋にところせましと絵が飾られていました。

山に登ったりする人はどこかの山小屋とかのお土産コーナーで一度はこの人の絵を見たことがあるのじゃないかしら。本当に日本の山と自然が好きだったんだろうな、と見ていると伝わってきます。

ぼくも山歩きが復活しているのです。縁は円のように戻ってきたりするのだけど、少しづつ違う景色を見せてくれて、山もそうだし、絵もそうなのです。

あとりえう
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異端の民俗学者、宮本常一の著した「忘れられた日本人」を読了した。昔の日本人といってもほんの六十年前の彼らだけど、なんて自由で心豊かでおおらかなんだろう、と思った。貧しさを通り越して、失われたものもたくさんるような気がして、どこか少しうらやましくもある。この本は西暦千九百六十年、昭和三十五年に出されたから、今から六十三年前には日本のどこかでこんな風景があったのだろうか。博徒や夜這いの話とかもあって、昔、見た寺山修司の映画「さらば方舟」を思い出す。それが不幸とは言いきれないけれど、現代という時代は、何かとても寂しい時代なのかもしれない。夜這いの話とかは出てこないけれど、ぼくはこの本の中のとても穏やかな「私の祖父」という章がとても好きなのだ。常民学と呼ばれる宮本民俗学をとても深いところで支え、その生涯を動かしたものに祖父の宮本市五郎とその人が常一少年に語ってきかせた昔語りがあったに違いない。そんな日本のおじいさんの話をぼくも聞きたい。




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スタジオ・ジブリの新しい映画「風立ちぬ」を見る。

大きな映画館の画面で見ると、丹念に描きこまれた背景画によって、戦前や戦中の日本に自分が紛れ込み、そこで息をしているかのようだ。映画は昔の松竹の映画へのオマージュかのように淡々と進むのだけど、そこにさしはさまれる幻想的な夢のシーンによって多重奏のような複雑・複眼的な豊かさを感じさせる。

昔の日本や日本人って美しかったのだろうと思った。主人公とフィアンセの淡い恋から愛への移り変わり。

たいしたエピソードもなく淡々と物語は進んでいって、ラストの1分にも満たない夢のシーンでの重いメッセージが胸に刺さり、過去の日本を描いているのに、明日への警告を含んだ近い未来のお話のようでもあった。

そして、ラストに流れるユーミンこと荒井由実(今の松任谷由美)の歌う「ひこうき雲」という歌は大好きな歌です。

http://kazetachinu.jp/
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神奈川県立近代美術館鎌倉へ「生誕100年 松田正平展 陽だまりの色とかたち」に行ってきた。五十歳を過ぎてから少しづつ絵が認められ、確かにそのころに松田正平さんは、誰のものでもない松田正平さんの絵を描き始めたのだった。

それまでにどうしていたかというと、戦前に東京美術学校西洋画科、今の東京芸術大学に入学しパリに留学時しかの地で第二次世界大戦が勃発、帰国、戦後の三十歳になるちょっと前までは学校の先生をしながら絵を描き続けていたのだが、宮内庁ご用達の洋裁師をしていた奥さまから、私は学校の先生と結婚したのではありません、と言われ、教員の職を辞してしまうのだが、絵が画廊で売れ始めたのは、六十歳からだという。なんかいい話だなぁ、でもないか。

生涯、祝島の風物を愛し続け、描き続けてもいる。その祝島、今は原発の立地候補とその反対運動で人の口吻にものぼるのは、また別の機会に。その祝島で絵を描いていた松田さんに島のある女の人は、うちの子もちょうどこんな絵をかくよ、と言ったという。そう言われた松田さんは満面の笑み。九十年の生涯を過ぎた偉大な画家は生きることの達人であったのかな。
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プロフィール
HN:
えいちゃん
性別:
男性
職業:
S.E.
趣味:
音楽
自己紹介:
音楽を演奏したり聴いたりするのが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。
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