えいちゃん(さかい きよたか)
えいちゃんのぶろぐ

平山周吉さんの著した『小津安二郎』を読了しました。小津安二郎監督の映画の好きな人には恰好の本で、興味深く、そして、面白く、読み始めたら止まらなくなってしまうような全部で二十一章の小津安二郎についての論考の本でした。
「第六章 人の如く鶏頭立てり「東京物語」」や「第七章 「晩春」の壺は、値百万両」では何か怖いような推論が展開されるのだけれども、小津安二郎という映画監督は、生涯、ファミリードラマを撮り続けながら、前の戦争で逝った人たちの無念を決して忘れなかった人でもあったのだと思う。今年で没後六十年、生誕百二十年の巨匠の亡くなった年、1963年は、ラジオの放送から、戦争の尋ね人のコーナーが無くなった年なのだそうだ。1963年のその後を生きていたら、小津安二郎はどんな映画を撮っていたかというようなことを考えるのは詮方ないことで、ただ時おり、小津安二郎の映画を見て、まさしく戦後を生きた人たちと時間をともにし、意識せずとも戦死者を追悼したくなるのです。

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