えいちゃん(さかい きよたか)
えいちゃんのぶろぐ
映画館でロバート・ワイズ監督の『サウンド・オブ・ミュージック』を見ました。109シネマズ二子玉川のiMAXという巨大スクリーンでデジタル修復された映像と音声に驚きます。主演ジュリー・アンドリュースの映画史に残るミュージカル映画の名作です。本当の主演は、素敵な歌を届けてくれる7人の子どもたちかもしれません。リチャード・ロジャースとオスカー・ハマースタイン二世の音楽の素晴らしさ。オーストリアを背景とした映像の美しさ。王道のストーリー。何度、見ても感動してしまいます。
サウンド・オブ・ミュージック 4Kデジタルリマスター
今の若い人は戦争をサッカー観戦のようなものと考えているのかもしれないが、それは違う。台湾海峡で戦争が起これば、たくさんの人が死ぬ。日本が参戦すれば、自衛隊の若い人もたくさん死ぬ。しかも台湾海峡は日本ですらないのだ。
坂口安吾の著した自伝的作品ではない純文学および幻想文学の代表作が収められた短編小説集の岩波文庫での『桜の森の満開の下・白痴 他十二篇』を読了した。所収されているのは、「風博士」、「傲慢な眼」、「姦淫に寄す」、「不可解な失恋に就て」、「南風譜」、「白痴」、「女体」、「恋をしに行く」、「戦争と一人の女〔無削除版〕」、「続戦争と一人の女」、「桜の森の満開の下」、「青鬼の褌を洗う女」、「アンゴウ」、「夜長姫と耳男」。
女性の一人称で書かれた「続戦争と一人の女」や、ぼくが安吾の最高傑作だと思う「青鬼の褌を洗う女」が大好きだ。何か吹き抜けていくものがあります。空襲の燃え盛り、崩れ落ちていく東京の街を嬉々として彷徨い歩く坂口安吾、その人すらも思い浮かべてしまう。安吾の滅亡を肯定する文学に、ぼくは恐れ慄いてしまう。武田泰淳とともに坂口安吾は、このような滅亡的な人類を見る視点を発見し、それは深沢七郎に受け継がれていくのだと思う。その残酷さは「桜の森の満開の下」や「夜長姫と耳男」に深く通底する。坂口安吾は残酷な少女が好きだ。それは敗戦と仏教から安吾の学んだ視座のようでもあるだろう。それから、「アンゴウ」という二十四頁の短い話にあるやさしさと儚さ、無垢な何かにぼくは惹かれてしまいました。
桜の森の満開の下・白痴/坂口 安吾
阪本順治監督の『てっぺんの向こうにあなたがいる』を見ました。世界で初めて女性でエヴェレスト登頂への登山に成功した登山家・田部井淳子さんの実話を基とした映画でした。
田部井淳子さんを吉永小百合さんが演じられており、若かりし日の田部井淳子さんをのんさんが演じられております。吉永小百合さんも、のんさんも素敵です。やさしい夫を演じた佐藤浩市さん、親友役の天海祐希さんもよかった。
癌を患った田部井淳子さんが自分の人生を回想するという建てつけの物語は、世界初のエヴェレスト登山を成功させた英雄物語にとどまらず、吉永小百合さんがあまりに人間的な影の部分も含めた喜怒哀楽を表現していて、直球ど真ん中の感動編となっておりました。
若かりしころのように、ぼくも山に登ることを夢見てしまいそうです。体力、筋力の回復のためにまずは低い山から始めなくてはなりませんな。
夢見ることは素晴らしく、それがかなうか、かなわないかに関わらず、挑戦することも素晴らしい。かなえども、かななくとも、素晴らしい贈りものが届けられるのでしょう。
ところで『てっぺんの向こうにあなたがいる』の「あなた」とは誰なのでしょう? 旦那さん、子ども、仲間たち? そのはっきりとした答えは映画の中にはなかったようなのです。ただ、「あなた」がいるからこそ、人は未踏を登れるのかもしれません。素敵なメッセージであります。
映画『てっぺんの向こうにあなたがいる』
山田洋次監督の『TOKYOタクシー』を見ました。原作はフランス映画の『パリタクシー』で、『パリタクシー』は昔、見たのだけれど、幸いなことに細かい筋をぼくはすっかり忘れてしまっています。時々、こんなシーンが『パリタクシー』にもあった、と思い出せど、ほぼ脚本は『TOKYOタクシー』独自なもののようです。
木村拓哉さんの演ずるタクシー運転手が、倍賞千恵子さんの演ずるお洒落なおばあさんを東京の葛飾柴又から引っ越し先の神奈川県の葉山の老人養護施設に送るという話。その途中でおばあさんはいろんなところに立ち寄り、壮絶な八十五年の人生と、その思い出をタクシー運転手に語り始める。おばあさんの過去を蒼井優が演じていて、やはりいい。倍賞千恵子さんの回想するおばあさんの表情がいい。意外に木村拓哉さんもなかなかうまい。失礼。
ロードムービーとなっていて今の下町や横浜の車の窓からの景色が素敵です。そして八十五年の間の日本の人びとの歴史もうっすらと浮かびあがります。そして、ラストは思いがけないプレゼント。いい映画を見ました。
映画『TOKYOタクシー』大ヒット上映中! - 劇場公開作品
六本木のEX THEATER ROPPONGIで『ADRIAN SHERWOOD presents DUB SESSIONS 20th ANNIVERSARY』とタイトルされたライブを見ました。ミュージシャンはAdrian Sherwoodのグループで、ゲストにDennis BovellとMad Professor。Dennis BovellはMatumbiのリーダーで、Matumbiの『Seven Seals』はぼくが今でも聞いてしまうブリティッシュ・レゲエの名盤です。
3時間以上、爆音の重低音に全身をさらされました。肩こりとか腰痛が治りそうです。しかも、メッセージが脳髄に直撃する。なんというまれな、他にない音楽体験でありましょう。最高です。
Adrian Sherwood、今の世界に怒っています。時に怒りは美しい。最新アルバムのタイトルが『The Collapse Of Everything』だからね。
余談ですが、Adrian SherwoodはOn-U Sound Recordsの社長なんだよ。もうひとつ余談で、Mad ProfessorはAriwa soundsの社長なんだよ。さらに余談で、Dennis Bovellは英国の国王から音楽への貢献により大英帝国勲章を授かっているんだよ。みんなIan Duryの歌う「Do It Yourself」だなって思います。