えいちゃん(さかい きよたか)
えいちゃんのぶろぐ



内田樹さんの著した『凱風館日乗』が面白くて一気読みしてしまいました。本のタイトルとなっている「日乗」は永井荷風の『断腸的日乗』を意識してとのことです。短い文章での日本への批評は、「第一章 日本が抱える困難について・・・・・・」、「第二章 世界はこれからどうなるのか?・・・・・・」、「第三章 日本救国論・・・・・・」から成り、この戦争にむかうかのような日本の現状下で、「第三章 日本救国論・・・・・・」では希望的な内容が書かれているのが、少し意外なようにも思われました。内田さんは特に若い人たちに何らかの希望を見いだしているようでもあるのです。
内田さんは、コモンの実践として道場兼学塾である凱風館を建て、合氣道の師範でもあられ、その凱風館にコモンを創造しようとしたという。その「コモン」とは、てらいもなく、経済学者、宇沢弘文のいう「社会的共通資本」、「公共の財産」であるだろう。反動の表層とは裏腹に、底辺の流れてとして、日本人はこのような方向に向かっているらしいことを内田さんは感じているらしいのだ。内田さんの言葉では「共有地」となり、それが日本各地に作り直されているらしい。ぼくも「共有地」か出発したいとも願う。
この本のしまいの文章は「武道的思考と資本主義」なのだが、そこで澤庵禅師の言葉が引用され、流派こそ違えども同じく合氣道を志してもいるぼくにとって、とても印象的でありました。
「蓋し兵法者は勝負を問わず、強弱に拘らず、一歩を出でず、一歩を退かず、敵我を見ず、我敵を見ず、天地未分陰陽不到の処に徹して直ちに功を得べし」
内田樹さんはこれをこう現代の言葉に訳しておられる。
「武道家は勝負を争わない。強弱を競わない。一歩前に出ることもないし、一歩後ろに退くこともない。敵は私を見ないし、私も敵を見ない。そうして、天地が未だ分かれず、陰陽の別もない境地において、直ちに果たすべきことを果たす」
それは、「資本主義が滅びるのが先か、人類が滅びるのが先か」の問題意識に接続しつつ、優劣のない世界に人を立たせ、人を勝敗から引き放ち、常に自己更新をする永遠の初心者となり、なすべきことをなすのが武道の道だとする。なるほどです。精進します。
内田樹 - 凱風館日乗


石井岳龍監督の『箱男』を見ました。原作は安部公房。
高校生のころ、文化祭か何かで見た安部公房が戯曲を書いた演劇『棒になった男』とかを思い出し、その何ともいえない気持ち悪さを思い出してしまいます。
ぼくのなかなかと思う三人の俳優、佐藤浩市さん、永瀬正敏さん、浅野忠信さんが出演しています。佐藤浩市さんの演じた軍医が気持ち悪くて、いい。看護士役の白本彩奈さんがとてもきれいです。
石井岳龍監督というと『逆噴射家族』がとても面白かった。
安部公房原作の映画で思い出すのは勅使河原宏監督の『砂の女』です。主演女優の岸田今日子がとてもよかったのですよ。
『箱男』は久しぶりにわけの分からない映画を見た感じがしました。不条理演劇というのは今でも演じられているのだろうか? 映画館を出てふと見渡すと、みんながスマホを覗き見ているような気持ち悪い世界にぼくも生きているような気もするのでした。
映画『箱男』オフィシャルサイト 2024年全国公開


渋谷のWWWというライブハウスで渋谷の虎子食堂というところの15周年記念というイベント『SUPER TIGER』に行ってきました。SOUL FIRE meets Chicaのあと、DJがレコードをかけます。爆音でレゲエ系の音楽を久しぶりに聴くのが気持ちいい。1時間近くして登場したUndefined meets こだま和文。「Ceasefire Now」と「Free Palestine」の手書きのプラカードをマイクの前にぶらさげて、こだま和文さんが、まったくぬるくない、冷水をあびせかけ、凍りつくような、詩とトランペットの本気のものすごいパフォーマンスを見せてくれました。最高でした。KODAMA AND THE DUB STATION BANDのライブを見たい。


梅原猛さんの著した『梅原猛の授業 能を観る』を読みました。ぼくも齢を一巡りすると、たまたまぼくが生まれたこの日本とは何だろうかと思い、能に惹かれもし、鑑賞しますが、この『梅原猛の授業 能を観る』を読むと、梅原さんの多様で大胆な学識により、日本の文化の古層があらわになるかのようなのです。
高校生のころ、梅原さんの『地獄の思想』や『水底の歌 柿本人麿論』を読み、そのユニークな論の立てかたと思想に感銘をおぼえた記憶があります。神社の在り方の本来は、国に対して恨みをもつ霊を鎮めるためのものが大きいのではないかと、梅原さんは卓見を述べておられました。
梅原さんは、日本を愛し、西洋に対して日本を擁護する日本主義者であり、国際日本文化研究センターの設立に尽力された人でありつつ、憲法九条の会の発足のまず初めの呼びかけ人であり、靖国神社の立場に反対の意をとなえられておりましたのには、一貫した切れることなない過去からの細い糸があったようにも思われもするのです。
梅原猛の授業 能を観る - 文庫 - 朝日新聞出版


上野の鈴本演芸場での令和六年八月下席昼の部に参りました。見た演目を書き出してみます。前座の柳家ひろ馬くんの「手紙無筆」、二つ目の春風亭一猿くんの「つる」、鏡味仙志郎師匠と鏡味仙成師匠のお二人の大神楽曲芸、林家しん平師匠の「初天神」、春風亭柳枝師匠の「金明竹」、笑組のお二人の漫才、春風亭三朝師匠の「太閤と曽呂利」、桂藤兵衛師匠の「須磨の浦風」、林家八楽師匠の紙切り、林家一蔵師匠の「ちりとてちん」で仲入りとなりました。そして、ダーク広和さんの奇術、古今亭駒治師匠の「山手線慕情」、宝井琴調師匠の講談の「徂徠豆腐」、柳家小菊師匠の粋曲、主任は春風亭一朝師匠の「三方一両損」でした。
印象に残った演目でございます。大胆に改変された林家しん平師匠の「初天神」は昭和の昔の祭りの夜店にまぎれこんだかのよう。林家一蔵師匠の「ちりとてちん」は大爆笑の連続。春風亭一朝師匠の「三方一両損」はそよそよと涼しい江戸の風が吹いておりました。寄席はパラダイスなのです。


