えいちゃん(さかい きよたか)
えいちゃんのぶろぐ

サントリー美術館で『没後300年記念 英一蝶 ―風流才子、浮き世を写す―』を見ました。英一蝶は江戸元禄の絵師で、
闇の世は吉原ばかり月夜かな
を詠んだ同じく江戸元禄の俳諧師にして松尾芭蕉の高弟、宝井其角とマブダチだったことを知る。落語にもよく登場する吉原の幇間、太鼓持ちであった英一蝶は、理由も分からぬ罪に問われ、生涯の中途で三宅島に流刑となり、徳川綱吉の逝去にともなう恩赦により江戸にもどれども、その時には無二の親友の宝井其角は亡くなっていた。その後も絵師としての探求を極めていった。
浄土真宗をおこした親鸞も流罪であった。能を大成した世阿弥も流罪であった。そして、英一蝶もであって、加えるに日蓮、法然、西郷隆盛で、島流しこそ、日本の偉人のたどるべき運命だろうか?
ぼくは、スーパーフラットを標榜する、この前に展覧会を京都で見た現代美術の作家の村上隆さんに感謝しなくてはならない。あの展覧会以来、ぼくの日本画を見る目が変化し、昔の日本画を自然に楽しめるようにもなったようなのです。
閑話休題、俳諧もたしなむ一蝶は、反逆児か、時代の生んだ寵児か、はたまた絵の天才か? そのどれでもあろう。英一蝶の絵に顕れもする、複雑な人物に見え隠れする一縷のヒューマニティーにぼくは惹かれてしまうのです。
没後300年記念 英一蝶 ―風流才子、浮き世を写す


島尾敏雄の著した『死の棘 短篇連作集』を読了しました。名作とのほまれの高い長篇の『死の棘』の前に書かれた原型にして、生々しい短篇小説で、昔、日本の文学には「私小説」というジャンルがあったことなどを思い出し、つげ義春の漫画を連想したりします。この『死の棘 短篇連作集』は大変な小説で、読み進めるのも辛くなることもあります。ふと、LGBTQももちろん含めて、1000組のカップルがいれば、1000通りの愛があるはずだとも思ったりします。しかし、この小説にでてくる愛は苦しすぎるのです。ふと、子はかすがいなどといいますが、かすがいにされた子どももたまったものではない。しかし、敏雄とミホの物語は通り過ぎ、作品は残り、人は去ってゆく、そのような愛の記憶となった愛の記録の物語『死の棘 短篇連作集』に真実はあるのではないでしょうか。
島尾 敏雄 - 単行本 死の棘 短篇連作集


新宿末廣亭に今日は昼から夜までの9時間近くいたしまった。令和六年十月下席です。昼の部と夜の部のそれぞれの見た演目を書き出してみます。
昼の部です。前座の金原亭駒介くんの「酒の粕」、二つ目の古今亭菊正くんの「元犬」、蝶花楼桃花師匠の「転失気」、小春師匠の三味線弾きの、唄いの音曲、古今亭駒治師匠の「出札口」、柳亭燕路師匠の「粗忽の釘」、すず風にゃん子・金魚のお二人の 漫才、初音家左橋師匠の「紙入れ」、林家錦平師匠の「不動坊」、アサダ二世さんの奇術、春風亭正朝師匠の「狸賽」、柳家 小里ん師匠の「碁泥」で仲入りとなりました。春風亭柳枝師匠の「居候講釈」、青空一風•千風のお二人の漫才、古今亭菊丸師匠の「子ほめ」、三遊亭歌奴師匠の「片棒」、ストレート松浦さんのジャグリング。主任は古今亭文菊師匠で「替り目」でした。
夜の部です。前座の三遊亭歌きちくんの「垂乳根」、二つ目の春風亭㐂いちくんの「道灌」、小梅さんなマジック、橘家圓太郎師匠の「権助芝居」、林家たけ平師匠の「金色夜叉」、ウクレレえいじさんのウクレレ漫談、春風亭勢朝師匠の「紀州」、柳亭市馬師匠の「時そば」、ホンキートンクのお二人の漫才、柳家小満ん師匠の「あちたりこちたり」で仲入りとなりました。春風亭一蔵師匠の「熊の皮」、のだゆきさんの音楽パフォーマンス、三遊亭師匠の「ツイッター泥」、蜃気楼龍玉師匠の「鹿政談」、鏡味仙太郎・仙成のお二人の師匠の大神楽曲芸。主任は春風亭一之輔師匠で「二番煎じ」でした。
昼の部の蝶花楼桃花師匠の「転失気」の小僧さんが微笑ましくもかわいいねぇ。夜の部の春風亭一蔵師匠の「熊の皮」は大爆笑。
昼の部、夜の部の主任のお二人、それぞれに個性的で愉しませてもらいました。昔、古今亭文菊師匠が一之輔兄さんのようにはわたしはお客を笑わせられないのは、どうしたことかと悩んでいる時、当時の落語協会の会長だった今は亡き柳家小三治師匠の言葉「笑わせようとするな」にはずいぶん救われたという。二人とも小三治師匠の落語協会の会長の時、抜擢で真打になり、そして、まったく違う方向に進みました。今の落語界を代表する噺家となったお二人、こらからも応援しておりますぞ。
寄席はパラダイスです。


安田淳一監督の『侍タイムスリッパー』を見ました。幕末の時代の会津藩の武士が薩摩藩の武士と切り合いになり、刀と刀がぶつかった時、雷に打たれ、起きれば、130年後の京都の時代劇の江戸の町を模した撮影所で目が覚めて、巻き起こる珍騒動という話の筋は、意外な方向に転がり、驚きのラストとなります。このラストには、眼もうるうるするほど感動し、あー、とても面白うごさいました。
この映画を見て、殺陣師や殺陣の見方も、ぼくの中で変わりそうです。実は、よくTBSのBS放送の東野英治郎の主演している再放送の『水戸黄門』をよく見ているぼくですが、時代劇の復活を願わずにはおられません。子どもの頃に見たテレビドラマ『素浪人 花山大吉』は強烈に印象に残っています。もちろん、黒澤明監督の三船敏郎主演の侍映画も駄作なしで、素晴らしい。
閑話休題、この『侍タイムスリッパー』はインディー映画として作られ、単館でロードショウが始まり、今では全国の映画館で上映されています。そして、2021年に逝去された、日本一の斬られ役とも呼ばれた福本清三さんに捧げられた『侍タイムスリッパー』は、まぎれもない楽しい名作なのです。
侍タイムスリッパー | 公式サイト


鈴本演芸場で令和六年十月中席夜の部を見ました。見た演目を書き出してみます。前座の入船亭辰むめくんの「子ほめ」、二つ目の古今亭雛菊さんの「二階ぞめき」、鏡味仙志郎師匠と鏡味仙成師匠のお二人の大神楽曲芸、古今亭圓菊師匠の「粗忽の釘」、三遊亭歌奴師匠の「近日息子」、立花家あまね師匠の三味線弾きの、唄いの民謡、橘家文蔵師匠の「手紙無筆」、柳家小ゑん師匠の「ほっとけない娘」で仲入りです。林家八楽師匠の紙切り、蜃気楼龍玉師匠の「もぐら泥」、アサダ二世さんの奇術、主任は古今亭文菊師匠の「ねずみ」でした。
さて、今夜の主任であった、ぼくの大好きな古今亭文菊師匠について書かねばなるまい。今夜の「ねずみ」は江戸時代の木彫りの彫刻師、左甚五郎の旅先での人情噺。文菊師匠の噺は登場人物と景色がくっきり目の前に広がるかのようで見事でごさいます。ほぼ同年代で似たような出世の道を歩いてきた春風亭一之輔師匠とはまったく別の道を選んできた古今亭文菊師匠、そのお二人に、落語という芸能の奥深く広い何かを思わずにはおられません。寄席は今夜もパラダイスでした。
古今亭文菊インタビュー「人との出会いは、全部自分の心次第で変わっていく」


パレスチナ人監督モハメッド・サワフとイギリスの名匠マイケル・ウィンターボトムが共同監督の『忘れない、パレスチナの子どもたちを』を見ました。今、起こっていることよりも前の2022年の映画だけれど、ガザで爆撃されて殺された子どもたちの肖像と遺された家族へのインタビューとその後の日常は、見ていて当然につらい。
ラストに緊急に今のガザで撮られたモハメッド・サワフ監督のインタビューがあり、虐殺の進行中のガザでは人々が必死に生きのびようとしているということ。ぼくに生まれた心の中の声は、大義とかぬかすイスラエルの正義を信じるな、ましてやアメリカーの正義も信じるな、ロシア、おまえもだ。子どもの命がこのように奪われていいわけはない。
『忘れない、パレスチナの子どもたちを』をより多くの人に見ていただきたく、この映画の日本語版のナレーションを担当した坂本美雨さんの言葉を引用したいと思います。Ceasefire now!
「今パレスチナで起きていることは"戦争"でも"宗教の争い"でも"ハマスが10月7日にしたことの報復"でもなく、76年間続いてきたイスラエルのパレスチナ人の虐殺と民族浄化です。今この瞬間も世界は、無実の子どもが殺されることを許している。好きなことがあった、やりたいことがあった子どもたち、この映画は、消されてしまった命の一つ一つの物語を、私たちの胸にひとりひとり、刻みつける。」
映画『忘れない、パレスチナの子どもたちを』公式サイト


世田谷美術館の『北川民次展 メキシコから日本へ』を見ました。北川民次は第二次世界大戦前にメキシコに渡った絵描きで、そのメキシコでは、フリーダ・カーロの夫、ディエゴ・リベラを中心とした民主主義、民衆主義の壁画運動の盛んであったころ、自由の空気を満々と吸い、民族と民俗の混交した生き生きとした世界を表現していたのだが、戦中の日本に戻り、その窒息するばかりの軍国主義に暗喩を織り込んでの気づかれないような抵抗の絵となる。メキシコでの民衆主義のようなものは北川民次を生涯にわたって突き動かすのだが、日本社会の壁にぶつかり、常に暗中模索に混迷しているかのようでもあるのです。そのような葛藤の鈍色の絵も美しく、メキシコ時代の伸びやかさはないけれど、そのような北川民次の絵を描くことによる戦いにぼくは共感してしまう。
同時開催での『ディレクターの仕事』での大判のポスターの大貫卓也の商業ポスターのたくさんの展示は、ぼくを「Japan as No.1」と呼ばれた1980年代と1990年代に引き戻すかのようで、眩暈のするような、むしろ思い出したくないとも思える狂乱の何かを感じてしまう。それに対比するかのような雑誌「暮らしの手帳」の編集長であった花森安治のレタリングはあまり1960年代、1970年代的なノスタルジーなのだ。この展覧会では、その花森安治が世界大戦中の軍部の広報部で国策宣伝の仕事をしていたのが明かされ、ぼくは驚き、当惑しててしまう。花森安治は戦中については何も語らず、「暮らしの手帳」の素晴らしさを支えた戦後の花森安治のとなえる「生活の中の美」とはどのようなもので、どのように生まれ、どのように企図されてあったのか?
小さな企画として『川田喜久治 シリーズ <地図> より』という写真展も開催されていた。川田喜久治の発見し捉えた原爆ドームの天井の染みは、多くの人が焼き尽くされ、一瞬にして天に昇った凄惨な痕だという。これは決して忘れてはならないことだし、核爆弾は決して使われてならないものだ。
世田谷美術館 SETAGAYA ART MUSEUM


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プロフィール
HN:
えいちゃん
性別:
男性
職業:
S.E.
趣味:
音楽
自己紹介:
音楽を演奏したり聴いたりするのが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。


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