えいちゃん(さかい きよたか)
えいちゃんのぶろぐ
平野啓一郎さんの著した『死刑について』を読む。死刑という制度があっていいものなのかどうかの論考で、平野さんはもともと死刑について存置派であったのが、今は廃止論者であるという。自身の小説『決壊』の取材やヨーロッパの友人たちとのコミュニケーションによって、廃止の側に立つようになった。ぼくは、この前、『死刑囚 表現展2022』という展覧会を見てから、死刑という制度に以前よりもますます懐疑の思いを強くし、この本を読んで、その懐疑はさらに強く、強くなった。死刑という制度が、殺されたものも含む死者への、その死への冒涜でもあるのではなかろうか、という思いすら、強くするのであった。ややこしいこととは知りながら、人権に制限などなく、この問題が新たに国民の議論として立ちのぼってくることを待ち望んでもいます。
銀座にある観世能楽堂に『能 山姥 長杖の伝』を見に行きました。開演を椅子に座って待っていると、シテって何かしらね、という隣からひそひそ話の声が聞こえてきます。ぼくは主人公のことです、とは答えませんでした。見始めればすぐに分かりますからね。村上湛さんの解説の後、能が始まります。村上さんはこうおっしゃます。
「「山めぐり」とは何か…見るものを深い思念に誘う劇的主題である」
観世能楽堂で購入した本『能面の世界』で見市泰男さんは山姥の能面について、こう解説しておられる。
「能の山姥は風貌怪異だが、化物ではなく、深山幽谷の主であり宇宙の象徴ともいえる超自然的な存在である」
『能面の世界』に載せられていた昭和の文豪、野上弥生子の能についての言葉。
「あらゆるものが有って、しかも無にまで及んでいる能面は、その本質をなにより明らかに示すものといふべきである」
なるほどです。ぼくは日本の伝統と美の劇と音楽を堪能しました。能は素晴らしい総合芸術です。
『戸井十月 全仕事』を読んだ。
浅野典子という人に興味を持ち、戸井の著した『シャコタン・ブギ 暴走族女リーダーの青春』が読みたくなり、『全仕事』に所収されているだろうと思い、読んでみたけれど、一部の抜粋であった。そのうらみはありつつも、浅野典子さんの戸井さんに関する文章も『全仕事』に「信頼、失望、そして感謝」と題されて掲載されていて、浅野さんは、『シャコタン・ブギ』ではあること、ないことを書かれ、その続編の『デッドエンド ジルバ』ではないこと、ないことを書かれたと述懐し、袂を分かちしたという。後に浅野さんはDJ KRUSHをプロデュースしたり、そして、アフリカの子どもたちを支援する「African Jug」を始める。袂を分かちながらも、二人はどこか地下で交差しているかのようだ。
しかして、この『シャコタン・ブギ』と『デッドエンド ジルバ』の若書きは戸井さんの中で最も重い後悔として残り、後にバイクで地を人の目の視線よりも低いところから旅をするルポルタージュとなっていったのではないか? などと考えつつ、とまれ、ぼくはCSの旅チャンネルでの戸井さんが世界をバイクで旅をする番組はいつも見ていたし、『遥かなるゲバラの大地』は何度も読み返し、その感銘から"Havana"という曲すら作っていた。僭越ながらもぼくの作った詞です。
♪♪♪
ハバナから旅に出よう
リスボンの港に立ち寄ろう
あの古いジャカルタの町で知った
ブンガ・ワン・ソロを歌おう
ハッカとマドロス・パイプをふかして
海の青さが知りたいだけさ
暗い夜の海の航海では
お月様だけがたよりなのさ
こんな僕の人生の中では
君の愛だけがたよりなのさ
ニュー・オーリンズの港を目指して
オールド・デリーの町を出たところさ
アフリカ・コンゴーで負けて
ボリビアの森の中に消えた
風と波の白さを受けて
舟は海の青さに溶けだした
暗い夜の海の航海では
お月様だけがたよりなのさ
こんな僕の人生の中では
君への愛だけがたよりなのさ
世界は僕の言葉と見たものに
驚きの声をあげるだろう
マストのてっぺんとデッキのへさきから
流れていく星や雲が消えた
舟よ、なつかしいハバナへ向かえ
マンボやチャチャチャを踊りたいだけさ
暗い夜の海の航海では
お月様だけがたよりなのさ
こんな僕の人生の中では
君の愛だけがたよりなのさ
暗い夜の海の航海では
お月様だけがたよりなのさ
こんな僕の人生の中では
君への愛だけがたよりなのさ♪♪♪
戸井さんはバイクの上では一人だからいいんだよとも言っていたな。
チェ・ゲバラは男の中の男と呼ばれたけれど、戸井十月も男の中の男だ。世界を旅したかっこいい人がいたんだよ。
新海誠監督の『すずめの戸締り』を見ました。
はじめのほうは地震を起こすような荒ぶる自然の力を平定しようとするなんて、そんな力は人には与えられていようはずもないじゃないかと、ぶちぶつと心の中でひとりごちつつ、映画を見ていたのですが、いつの間にか、もっていかれ、感動しておりました。ぼくの眼にうっすら涙も。
この前、見た『天間荘の三姉妹』と同じく地震ということがが物語の重要なモチーフとして出てきます。そして、『すずめの戸締り』はロードムービー、旅する物語。「平家物語」や「方丈記」の昔から日本人は、目の前のどうしようもない絶望のような悲しみを物語によって、それを語り聞くことによって、前を向いてきたような気がします。
映画を見て、映画館を出てくると、女子の声であのシーンがよかった、云々すんぬんという、後ろの方で友だち同士が話している声が聞こえました。学校で、見た、見たと聞ききあう声、こういうのっていいなと青春をはるか昔に過ぎたぼくは思うのでした。でも、こんな映画を見て、感動しているなんて、ぼくも心は古びていないのさ。
映画『すずめの戸締まり』公式サイト
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プロフィール
HN:
えいちゃん
性別:
男性
職業:
S.E.
趣味:
音楽
自己紹介:
音楽を演奏したり聴いたりするのが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。
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