えいちゃん(さかい きよたか)
えいちゃんのぶろぐ
坂口安吾の著した自伝的作品ではない純文学および幻想文学の代表作が収められた短編小説集の岩波文庫での『桜の森の満開の下・白痴 他十二篇』を読了した。所収されているのは、「風博士」、「傲慢な眼」、「姦淫に寄す」、「不可解な失恋に就て」、「南風譜」、「白痴」、「女体」、「恋をしに行く」、「戦争と一人の女〔無削除版〕」、「続戦争と一人の女」、「桜の森の満開の下」、「青鬼の褌を洗う女」、「アンゴウ」、「夜長姫と耳男」。
女性の一人称で書かれた「続戦争と一人の女」や、ぼくが安吾の最高傑作だと思う「青鬼の褌を洗う女」が大好きだ。何か吹き抜けていくものがあります。空襲の燃え盛り、崩れ落ちていく東京の街を嬉々として彷徨い歩く坂口安吾、その人すらも思い浮かべてしまう。安吾の滅亡を肯定する文学に、ぼくは恐れ慄いてしまう。武田泰淳とともに坂口安吾は、このような滅亡的な人類を見る視点を発見し、それは深沢七郎に受け継がれていくのだと思う。その残酷さは「桜の森の満開の下」や「夜長姫と耳男」に深く通底する。坂口安吾は残酷な少女が好きだ。それは敗戦と仏教から安吾の学んだ視座のようでもあるだろう。それから、「アンゴウ」という二十四頁の短い話にあるやさしさと儚さ、無垢な何かにぼくは惹かれてしまいました。
桜の森の満開の下・白痴/坂口 安吾
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