えいちゃん(さかい きよたか)
えいちゃんのぶろぐ

VODで溝口健二監督の『雨月物語』を見ました。1953年の映画です。原作は上田秋成の読本『雨月物語』の「浅茅が宿」と「蛇性の婬」の2編に、モーパッサンの『勲章』を加えて、川口松太郎と依田義賢が脚本を書いております。
幽霊のお姫様、若狭を演ずる京マチ子が、西洋風にいえば美しき女神であるかのような妖艶さです。溝口健二の演出は完璧で、リアリズムに徹しながら、その映像と、能の謡などの日本の古き音楽や読経の声を多く採用した音像は、芸術の高みの達し、美しいばかり。第13回ヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞を受賞しました。第13回ヴェネツィア国際映画祭は金獅子賞はその年は該当作なしということで、実質の一位ということであります。
溝口健二はオーソン・ウェルズ、ジャン=リュック・ゴダール、アンドレイ・タルコフスキー、ピーター・ボグダノヴィッチ、マーティン・スコセッシらのたくさんの名匠にレスペクトされ、この『雨月物語』の国際的評価もゆるぎなく、日本映画ここにあり、といった文字通りの名作ということでございます。


国立能楽堂で『狂言と落語・講談 聟入りのさまざま』と題された講談と落語と狂言の会に来ました。
講談は宝井琴調師匠による「安兵衛婿入り」。琴調師匠は講談の要諦は登場人物をこれでもか、これでもかと褒めることだと枕で語っておられました。なるほどです。「忠臣蔵」から大酒飲みの剣の達人の婿入り話。
落語は三遊亭好楽師匠による「小間物屋政談」。大岡越前の登場する政談もの。テレビ番組「笑点」の人気者の好楽師匠だけれど、人情噺が一級のうまさです。
狂言は大蔵流のシテを茂山茂さんのつとめる「八幡前」でした。この「八幡前」には底のところには神道の八幡信仰と仏教の殺生戒があるのですが、わかりやすくて、ドリフのコントみたいです。大いに笑いました。
暗いこの世のつらさ忘れ、今日の能楽堂は心のオアシスです。


藤井崇監督の『大長編 タローマン 万博大爆発』を見ました。なんだか同じようなシーンがつづくのと、わけのわからなさで途中、かなりうとうとと眠くなってしまいました。この映画は全面的に岡本太郎の芸術をモチーフにし、レスペクトしているような内容なのです。タローマンは太陽の塔から抜け出して、生まれたかのようでもあるのです。川崎にある岡本太郎美術館には何度も足を運んだ記憶があります。かの有名な太陽の塔は1970年の大阪万博で、岡本太郎もついに商業主義に足をからめとられ、前衛を捨てたなどと批判されたことを思い出します。沖縄の御嶽に無礼に足を踏み入れ、批判されたことも思い出します。それらを知っていつつも、ぼくは岡本太郎の芸術が好きなのです。
この『大長編 タローマン 万博大爆発』は三つの言葉が大きな役割とメッセージが発されているように思えます。それは「なんだ? これ!」と「でたらめ」、「べらぼう」。この映画には岡本太郎の芸術がこれでもか、これでもかとあらゆるところに散りばめられております。岡本太郎の出ていたCMのセリフも思い出します。「成功したら成功したでいい。失敗したら失敗したでいい。それだけでいい。ただ瞬間、瞬間を、猛烈に、強烈に生きるっていうことが本当の人間の生き方だと僕は思うんだ。人生相談なんて意味はない。時間の無駄だよ」。かっこいいなー。
おもしろくてわけのわからない映画です。それで疑問のなにがしかをうめたくて、パンフレットも買ってしまったじゃないですか。
映画『大長編 タローマン 万博大爆発』 公式サイト


VODで小津安二郎監督の『お茶漬の味』を見ました。1952年の映画です。
もとは1932年に制作されるはずだった映画で、時局に合っていないということで、検閲による不許可となったといういわく付きの映画です。夫が軍隊へ応召するという内容が、敗戦後、会社の命令でウルグアイに赴任となるということになった。
「うん、今が一番、いい時だよ」というのは小津の映画で何度も出でくるお馴染みのセリフであるのに気づきました。それから、これも、よく出てくるセリフです。「ああ、戦争は、もうごめんだね、やだね」。監督がそこはかとなく自分の本音を主人公のセリフに託しているのでしょうか? 小津安二郎は三回も応召しているのです。
妻役の木暮実千代が憎たらしくてとてもいいのですが、それをすべて許すのが佐分利信の演ずる夫で、そのやさしさに感じいってしまいます。夫は手を洗う妻の羽織にそっと手をやり、濡れないように気を使います。昔、映画館でこの映画のこのシーンを見たとき、隣にいた女子の涙腺が決壊しているようでありました。後に小津安二郎はこの『お茶漬の味』を失敗作と言っておりましたが、なかなかいい映画だとぼくは思うのですが。




八月二十二日、 新宿末廣亭にて令和七年下席昼の部です。いつものように見た演目を書き出してみます。前座の林家十八くんの「鶴」、二つ目の柳家小はぜくんの「権助魚」、小林けん太さんの音まね、鈴々舎馬るこ師匠の「タトゥーに込めた愛」、蜃気楼龍玉師匠の「鹿政談」、寒空はだかさんの漫談、初音家左橋師匠の「酢豆腐」、古今亭菊千代師匠の手話についての漫談、ロケット団のお二人の漫才 、林家しん平師匠の焼肉屋についての漫談、古今亭志ん輔師匠の「紙入れ」で仲入りです。柳家あお馬「金明竹」、柳家小菊師匠の三味線弾きの唄いの粋曲、桃月庵白酒師匠の「ざるや」、林家木久扇師匠の立川談志についての漫談、むかし家今松師匠の「親子酒」、翁家社中のお二人の太神楽曲芸、主任は柳家小せん師匠の「井戸の茶碗」でした。
最近は落語を聞きながら、うとうとと夢のはざまに行ってしまうことも、いいことのような気がしています。さて、特に印象に残った演目です。蜃気楼龍玉師匠の「鹿政談」。この噺は大好きなのです。蜃気楼龍玉師匠、うまかった。ロケット団の漫才はテレビでは放映できないような爆笑ものでした。林家しん平師匠の漫談でさらに笑い、古今亭志ん輔師匠の「紙入れ」で大爆笑。桃月庵白酒師匠の「ざるや」のぽんぽんと軽妙な小気味よさが楽しい。林家木久扇師匠の漫談でのいつもの談志のこと。鈴々舎馬風師匠もよく談志のことを漫談にしていて、立川談志もその変人ぶりがこれだけ語り継がれるとは、えらいやっちゃ。柳家小せん師匠の「井戸の茶碗」は一人の江戸の町民の正直さと二人の武士の清廉さが、思わぬ幸福となります。お見事。
暗いこの世のつらさ忘れ、寄席は心のオアシスなのです。


VODで黒澤明監督の『生きる』を見ました。1952年の映画です。
深刻な悲劇をユーモアで包んだエンターテイメントを黒澤監督のヒューマニズムが支えており、映画史上に残る素晴らしい映画になっております。「黒澤ヒューマニズム」とも称されます。
志村喬が主役をはった一世一代の素晴らしい演技に感動します。志村喬がブランコに乗って、少しだけ揺れながら「ゴンドラの唄」を歌うあのシーンほど美しい何かを表したシーンをぼくは知りません。
この映画は何度も見たけれど、今回は左卜全の演技に注目してしまいました。左卜全ほど人をくった異能の名脇役はおりません。演技を離れた左卜全も並外れた変人だったそうです。
ぼくの年齢で見ると、「おまえは生きてきたか?」と問われるようでもあり、この『生きる』という映画は何か痛切に身につまされます。


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プロフィール
HN:
えいちゃん
性別:
男性
職業:
S.E.
趣味:
音楽
自己紹介:
音楽を演奏したり聴いたりするのが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。


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