えいちゃん(さかい きよたか)

えいちゃんのぶろぐ

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與那覇潤さんの著した『帝国の残影 兵士・小津安二郎の昭和史』が面白くて、一気読みしました。小津安二郎の生涯を追ったものではなく、小津が彼の生きた同時代、昭和をどう見て、その映画に表象されてしまっていて、その時代がどのようなものであったかを考察した本です。

読了して、初めて、ぼくを惹きつけてやまない映画監督、小津安二郎の墓碑に「無」とあるかの理由が少し分かった気がしました。この本を読んで、小津の死んだ後のテレビでのホームドラマと小津の映画には決定的に違う何かがあるような気がしていたのは確信となりました。三度の従軍経験がありながら、戦争を直接には撮らずして、戦争について映画の中で言及し、戦争を滔々と流れる底流として、戦争を描いた小津の映画。この本の「終章 呪わしき明治維新―『東京暮色』賛」の驚くべき結論となります。小津安二郎の映画に少しでも惹かれる人は本書を読んでみてください。









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こんな夢を見た。朝、郵便箱を開けると、郵便物が届いている。中を見ると何かの本で、ぼくの書いた散文と詩らしいのだ。そして、見知らぬ写真もその本には載っている。ふと、ぼくがファンである藤原新也さんのファンサイトで文章を本にするということの募集をしていて、それに応募したことを思い出す。佳作か入賞か何らかの当選をして、ぼくの散文と韻文に藤原さんがみずから選んだ写真を付け本にしてくれたらしい。藤原新也さんの写真もぼくの文も素晴らしい。届けられた本が嬉しい。

そこで目が覚めた。藤原新也さんのファンサイトにぼくは会員として入っているのだけれど、実際には、そこでは文章を本にするための募集というのはしておりません。この夢は何らかの神様からのお告げかもしれないと、ぼくは思い始めました。生涯を通して、してきたこと、詞や歌を何らかの形で残すべきだという、神様からのお導きかもしれません。などと考えている未明にふとCD付きの本を自費で出したらどうかなどを思い浮かべてしまいます。宮澤賢治の詩や童話だって自費出版だったんだ。この夢自体がいい贈り物でもあり、その夢を形にするってことは素敵なことですな。
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ウェス・アンダーソン監督の『アステロイド・シティ』を見ました。よく分からない変な映画だけれど、不思議に眠くならないのは、アンダーソン監督の作るその映像の喚起力からでしょうか? 映画はアリゾナ州かどこかの大昔に隕石の落ちてきた何もない砂漠の町。疑似B級映画のその映像に、ぼくは藤原新也さんのカリフォルニアの風景を撮った写真やデイヴィッド・ホックニーのカリフォルニア時代の絵画を思い出してしまいます。トム・ハンクスが重要な脇役で出演していたのに全然気付かなかった。

9/1(金)公開|映画『アステロイド・シティ』公式
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新宿のベルグで軽いランチをして、末廣亭で寄席見物です。


本日の演目でいちばん印象に残ったのは、講談再興に人生をかける神田伯山師匠の「名月若松城」でした。近頃、ぼくの気になっている武士道について、武士の美徳とはこういうものだよと教えられたような気もするのでした。伯山さんの当面の目標は、講談を主として催されている興行部屋を立ち上げることだそう。そうだ、その意気だ、がんばれと、声援を送りまする。

山口君と竹田君のコントに爆笑し、三遊亭とん馬師匠の小咄にまた爆笑。二つ目の春雨や風子さんの「茄子娘」の茄子から生まれた茄子娘が可愛らしい。主任は春雨や雷蔵師匠の「星野屋」。この落語は江戸のちゃきちゃきのフェミニズムかもしれませんぞ。

夕方に九段下へ地下鉄で移動し、国立新美術館の『テート美術館展 光 ― ターナー、印象派から現代へ』を見ました。


なんとなくの流れで行ってしまったのだけれど、面白かった。テート美術館を開いたヘンリー・テート卿は製糖で財を成し、美術の膨大なコレクションを残し、イギリス、ロンドンの国立美術館に寄贈したのが始まりという。光をテーマにしつつ、18世紀から21世紀までの西洋の絵画からインスタレーションまでを見ていくという内容を見つつ、逆にぼくは谷崎潤一郎の「陰影礼賛」というようなことも思い出してしまったりもします。

そして、夜はビルボード東京てダン・ペンとスプーナー・オールダムのコンサート。


一曲目の可愛らしく誠実な「I,m Your Pupet」から胸がジーンとして目頭が熱くなります。このお二人、アラバマ・ソウルを支え、名曲をこれでもかこれでもかと作ったソングライター・コンビにして、ダン・ペンはベースプレイヤー、スプーナー・オールダムはキーボードプレイヤーの名手でもあって、アラバマ州のマッスルショールズという片田舎にあったフェーム・レコーディング・スタジオから1960年代、ソウル・ミュージックを発信しつづける。マッスルショールズはテネシー州メンフィスのスタックス・スタジオと並ぶソウル・ミュージックの発信地だったのだ。初めてかの地のフェーム・レコーディング・スタジオに訪れたアレサ・フランクリンはミュージシャンの多くが白人だったことに驚き、本当にこの人たちがリズム・アンド・ブルースを、ソウルを演奏できるのかと訝しく思ったというが、その放たれる音はまさしくソウルだった。その伝説の二人が目の前にいて歌ってくれているのです。歩く姿は年で弱っているらしいけれど、歌い、演奏し始めると、その艶やかなことこの上ない。そうだ、ぼくは何度もソウル・ミュージックに救われたのだとも思う。この世界に善なるもの、愛が存在することをソウル・ミュージックによって、ぼくは何度も知らしめられました。そんなソウル・ミュージックの中心にいた二人が歌い、演奏している。最高の夜でした。
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内田樹さんの著した『街場の成熟論』を読みました。

この本を読みながら、ぼくは会社勤めをしていたころのあるシーンを思い出していた。そのシーンとは、とある会社の朝会の時、役員と肩を並べるある部長が、口角泡を飛ばしつつ、激しい口調で、白か黒かはっきり結論づけて、決着し、責任を取れなどと言っているらしかった。隣でそれを聞いてある年下のぼくの同僚は、ぼくに、サカイさん、白か黒かとか言われても、人間、大概、白か黒じゃなくて、グレーですよ、まったく白い人も、黒い人もいないですよ、どのぐらいグレーかが大事じゃないですかなどと耳元で囁いたのだ。ぼくはその同僚の彼を尊敬する心で見て、なるほど、あの激しい口調で発言している人よりも遥かに彼の方がはるかに大きな人、大人、成熟した人だと思い、敬意をいだいたのであった。その彼の囁きは、白か黒か、どうせ人間ははっきりしないのだからと、冷笑的になるのではなく、どの程度グレーなのかを見極めて、その時その時の熟考の末に留保付きの判断なり決断を下すしかないのではないかということも含意し、その成熟さにぼくは驚き、敬意をいだいたのであったと思う。

さて、本についてに戻り、ぼくは『街場の成熟論』を書いた内田さんと同様に、この本の書かれているように、これからの日本人にグレーのどこかにあるかをよく考え、決してニヒリズムに陥らず、真実をわきまえつつ、常識的であって欲しいと願ってもいるのです。そして、ぼくなどは小さい人間ですが、この社会の明日のために、この本が多くの人に読まれることも願っているのです。








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町田のアサノでカレーを食べに出かけると、町田天満宮で秋の例大祭が催されているらしく、足をのばしました。小さな神社は人だかりで、神輿が街に繰り出し、その神輿を見ていると、どこかのお母さんが小さな子どもに、あの中に神様がいるだよなどと教えています。そして、なんだか今日は涼しさも感じられ、「暑さ寒さも彼岸まで」という言葉も思い出されますな。秋祭りの昼下がりです。
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小田急相模原のエルトピートで開催される、三雲参龍さんの主催する「月にポエロ 第三夜」に行って参りました。ポエトリーリーディングの集いです。



ぼくは今年の梅雨ごろに始めた俳句を披露いたしました。以下のようないくつもの句でございます。

 雨降らぬ梅雨の青空蝉はじめ

 朝早く蓮の咲くのを聞いたことなし

 夜の風アイスをほうりバスを待つ

 入道雲フロントガラスにまた立ち昇る

 油蝉駐車場での死骸なり

 雷の雲間に青空見えにけり

 掃き掃除散っては咲くよ百日紅

 夏越えの鱒を釣らずに草を釣る

 ロマンスカー窓から見えた鰯雲

 暗き雲響けど見えず遠雷か

 燕去る議事堂の空花の歌

 釣竿に二頭紅さす赤蜻蛉

 森の道レオの思い出彼岸花

 彼岸花つつじの葉の間二輪咲き

稚拙ですかな? 今年の五月に神奈川近代文学館で『生誕120年 没後60年 小津安二郎展』を見て、とても面白く、小津安二郎監督の映画をオンデマンドビデオでたくさん見もし、本でも読み、小津が俳句を好きだったらいしことを知り、自分でも作ってみようと思い、始めたのが梅雨ごろだったのです。俳句の残す余韻のようなものは、あたかも小津安二郎の語りすぎない映画のようなでもあると感じます。俳句というのは、有季(季語)やら定型(五七五)という緩やかな縛りがあり、その縛りと短さが、逆にぼくにとって、自由な表現を可能にしてくれている、あたかもアフリカンアメリカンのブルーズの形式のようでもあると感じられ、なんだか、とても気に入り、面白いと思ってもいます。あまりに短い詩の形式からプライベートなことしか読めず、それが読み人知らずの普遍へ突き抜けていくかのようでもあるのです。俳句はこれからも作りつづけていく所存でございます。

それから今年は関東大震災の百年後ということで、折口信夫の「砂けぶり」という詩を朗読しました。折口信夫は柳田國男と並ぶ、民俗学者のして国文学者、国語学者にして、詩人であり歌人であった人でりあます。国学院大学の民俗学部を開いた人でもあった。

砂けぶり 一

夜になつた―。
また 蝋燭と流言の夜だ。
まつくらな町を 金棒ひいて
夜警に出るとしよう

かはゆい子どもが―
大道で ぴちやぴちやしばいて居た。
あの音―。
不逞帰順民の死骸の―。

おん身らは 誰をころしたと思ふ。
陛下のみ名において―。
おそろしい呪文だ。
陛下万歳 ばあんざあい

砂けぶり 二

焼け原に 芽を出した
ごふつくばりの力芝め
だが きさまが憎めない
たつた 一かたまりの 青々した草だもの

両国の上で、水の色を見よう。
せめてものやすらひに―。
身にしむ水の色だ。
死骸よ。この間、浮き出さずに居れ

水死の女の印象
黒くちゞかんだ藤の葉
よごれ朽つて静かな髪の毛
―あゝ そこにも こゝにも

横浜からあるいて来ました。
疲れきつたからだです―。
そんなに おどろかさないでください。
朝鮮人になつちまひたい気がします

深川だ。
あゝ まつさをな空だ―。
野菜でも作らう。
この青天井のするどさ。

夜になつた―。
また 蝋燭と流言の夜だ。
まつくらな町で金棒ひいて
夜警に出掛けようか

井戸のなかへ
毒を入れてまはると言ふ人々―。
われわれを叱つて下さる
神々のつかはしめだらう

かはゆい子どもが―
大道で しばつて居たつけ―。
あの音―。
帰順民のむくろの―。

命をもつて目賭した
一瞬の芸術
苦痛に陶酔した
涅槃の大恐怖

おん身らは誰をころしたと思ふ。
かの尊い御名において―。
おそろしい呪文だ。
万歳 ばんざあい

我らの死は、
涅槃を無視する―。
擾乱の歓喜と
飽満する痛苦と

そして、折口信夫の短歌での号、釈迢空の短歌とその自らの注釈を、日本人よ、決して繰り返すなの願いも込めて朗読しました。

国びとの
心(うら)さぶる世に値(あ)ひしより、
顔よき子らも、
頼まずなりぬ

大正12年の地震の時、9月4日の夕方ここ(増上寺山門)を通つて、私は下谷・根津の方へむかつた。自警団と称する団体の人々が、刀を抜きそばめて私をとり囲んだ。その表情を忘れない。戦争の時にも思ひ出した。戦争の後にも思ひ出した。平らかな生を楽しむ国びとだと思つてゐたが、一旦(いったん)事があると、あんなにすさみ切つてしまふ。あの時代に値(あ)つて以来といふものは、此国(このくに)の、わが心ひく優れた顔の女子達を見ても、心をゆるして思ふやうな事が出来なくなつてしまつた。(折口信夫による自歌自註)

詩の朗読会というのはとても面白い。人の詩の朗読にも聞き入ってしまう。とてもいいひと時でございました。今回は全六夜の三夜目で、次は11月11日(土)の19時からだそうです。楽しみ…。

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プロフィール
HN:
えいちゃん
性別:
男性
職業:
S.E.
趣味:
音楽
自己紹介:
音楽を演奏したり聴いたりするのが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。
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