えいちゃん(さかい きよたか)

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平山周吉さんの著した『戦争画リターンズ―藤田嗣治とアッツ島の花々』を読了。平山さんの本は知らなかった不幸な戦争期の昭和について、何かを知らさせ、目を見開かされるようで、面白い。本の帯にはこうある。

名画「アッツ島 玉砕」が啓示する昭和史
凄絶な玉砕シーンに、藤田嗣治が丹念に描き込んだ「死者の傍らに咲いている花」はいったい何を語りかけるのか? 英霊たちが眠る厳寒のアッツ島には終戦七十年の秘密が冷凍保存されている。

この藤田画伯の「アッツ島 玉砕」は二度、竹橋の国立近代美術館で見たことがある。一度は若かりしころで、一度はこの前で、戦争画特集と称され常設展示されていた。昭和の戦争期に描かれた戦争協力絵画の一つとして展示されてあった「アッツ島 玉砕」にぼくは嫌悪感をおぼえながらも、惹き付けられ、たたずんでいた。

熊谷守一のように戦争を忌避し、絵筆を取らなくなるという身の処置の方法もあったろうに、藤田嗣治はさまざまな思惑もあっただろうが、ナチスのドイツによるパリ陥落の後、日本に戻り、オカッパ頭を坊主に刈り、戦争絵画を描いていく。戦後、それらの絵を美術史家や美術評論家から執拗に糾弾され、パリに戻り、客死する。アメリカに接収された戦争画は「無期限貸与」という形で昭和四十五年に日本に戻される。そのような藤田の「アッツ島 玉砕」をめぐる章が四十八章あるのこの本は、どの章も興味深く、読めば戦時期の日本の空気が本から匂い立つかのようなのである。

戦争に加担したという責任を問えば、どの有名な文化人も免れえず、小説の「麦と兵隊」や「土と兵隊」を書いた火野葦平などがもっともやり玉にあげられ、火野は昭和三十五年、睡眠薬による自殺を遂げた。

この本から離れ、ぼくの知るところによれば、戦争に批判的であった永井荷風はペンを置き、同じく戦争に批判的であった谷崎潤一郎は「細雪」を書き始める。谷崎は戦後のNHKラジオのインタビューでうるさい軍部の目眩ましとして「細雪」を書き始めたといっていた。戦後、詩人、彫刻家の高村光太郎は自分を罰し、山荘で自給自足の生活を始めた。

この「戦争画リターンズ」を読んで、ぼくはもう一度、国立近代美術館を訪ねて、ゆっくりと藤田嗣治の「アッツ島 玉砕」を鑑賞しつつも、対峙したいと思う。

戦争画リターンズ 藤田嗣治とアッツ島の花々 - 芸術新聞社
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