えいちゃん(さかい きよたか)

えいちゃんのぶろぐ

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池田香代子さんの訳されたエーリヒ・ケストナー作の「飛ぶ教室」を読んだ。児童向けの文学の作家でケストナーは特に大好きで、この「飛ぶ教室」は何度も読んでいる。クリスマスの12月の寄宿学校の物語はこの季節にぴったりで、読後感は心が洗われるよう。1933年にこの本はドイツで出版され、その年はナチスに政権を奪われた年で、後にケストナーの児童文学は、たくさんの少数民族を殺人した政治家たちに焚書される。そんななかで、ケストナーの心は壊されなかったし、物語の中の子どもたちと先生によって抵抗をしているような一文を紹介いたします。

「世界の歴史には、かしこくない人びとが勇気をもち、かしこい人びとが臆病だった時代がいくらもあった。これは正しいことではなかった」

さらに、それ以上に、きらきらした輝く美しい言葉もたくさん出てくる。一つだけぼくの心に深く刻まれた言葉を「飛ぶ教室」から。

「星は消えても、光はずうっと旅をする」

こんな池田香代子さんの日本語訳も美しい。

ベンヤミンはケストナーの小説をブルジョアのなぐさみものと言ったそうだが、まさか。ケストナーは生粋の労働者の息子だったのだよ。そして、ケストナーの児童文学を愛するぼくもそうなのです。








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太田和彦さんの著した「酒と人生の一人作法」を読む。昔、太田さんの本に書かれていることをいいなぁと思い、あこがれ、いろんなところに居酒屋を求めて小さな旅によく出ていた。この「酒と人生の一人作法」を読んで、また、そんな旅をしたくなるとともに、この本には晩年の人生の流儀ともいうべきことも書かれているのだ。本の帯にもあるこの本からの太田さんの文です。

「ながく生きてきて、ものごとが見えてきた。社会的地位が高い・低いなどという価値観はとうに消えた。そういうことにこだわる人はつまらん人だとわかってきた。立身出世をはたした、経済的に成功した、それがどうした。頭がいいとか、リーダーシップがあるとかも、どうでもよいことになった。人生の価値観が変わったのだ」

太田さんのもともとの生業は「異彩」とも「奇才」と呼ばれたグラフィック・デザイナーで、いくつかの賞も取られ、頂点まで達した人で、そのような人だから、ぼくはおこがましくも太田さんの言葉に本当の響きを感じてしまう。

アーサー・C・クラークの名作に「幼年期の終わり」というのがあったけれど、ぼくの老年期は太田和彦さんに習いたい。一人で居酒屋に入り、少ない肴と美味しい日本酒をせいぜい二合、ゆうゆうと飲み、いつでも穏やかにして笑みをたやさず、楽しい話をして、さっと切り上げ、水鳥のごとく、後を濁さず去っていく。偶然に諏訪の居酒屋で会った太田さんはそのような人であった。また偶然にどこかの居酒屋で会いたいな。








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金時鐘さんの著した「背中の地図 金時鐘詩集」を読む。

「金時鐘」と書いて「キム・シジョン」と読むこの詩人は、今は亡き中上健次が尊敬していた在日の詩人で、言葉遊びではない、中上健次ふうにいえば、切って血が出るような言葉がそこにいつもある。

この「背中の地図」は東北大震災の後に書き綴られてきた現代詩で、内省的でありながら外に開かれ、詩となった痛みはぼくの胸をえぐりながら、清冽な清水のようでもある。日本にも、ガルシーア・ロルカやパブロ・ネルーダのような詩人がいることを知る。

その人生は波乱そのもので、戦中は内鮮一体や大東亜共栄圏・八紘一宇を信じて疑わず、日本の敗戦時には皇国少年として天皇陛下への申し訳無さから涙にむせぶ。戦後の済州島の島民虐殺を生き延び、大阪に渡り、ろうそく工場で働きながら、詩を書き、社会主義に傾倒するも、その権威主義に疑問を抱き、北朝鮮の体制を嫌悪する批判文を書き、朝鮮総連から民族の裏切者と呼ばれる。ここにも異邦の眼差しがあったのだとぼくは思うのだった。

金時鐘さんは「詩は書かれなくても存在する」という。「背中の地図」の出版に際しての最近のインタビューでの言葉。

「よほど恵まれた人でない限り、喉元(のどもと)まで突き上がる思いを抱えながら、飯を食うために好きでもない仕事をやっているんです。その思いを言葉にできるのが詩人。美しい世の中があるとすれば、書かれない詩を生きている人が満遍なく点在している国です」

そのように語る詩人はこのように人生をふりかえりもする。

「私にとって、詩を書くというのは『そうであってはならないことには与(くみ)しない』ということ。つらい目にあったけど、それで精神が傷つくことはなかったな」

励まされるようです。








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ブライアン・シンガー監督の「ボヘミアン・ラプソディ」を見た。

ロックバンド、クイーンのボーカリスト、フレディー・マーキュリーの生涯を追った映画です。フレディー・マーキュリーって、何重ものマイノリティーであったのを知った。そんな彼が1970年代と1980年代に、世界の共通言語だったようでもあるかもしれないロック・ミュージックを選んで、表現をしたことは、必然で導かれたものだったようにも思えた。

クイーンのアルバム「オペラ座の夜」は、ぼくが中学生の時、少ない小遣いを貯めてやっと買って、毎日毎日、中学から帰って来て、聴いたレコードなのです。青春ともまだ呼べないそのころに、ぼくがぼくである限りぼくにはどうしても逃れられない死ぬまで続くかのような孤独ということ発見したようで、そこで出会ったのがロック・ミュージックだったように思う。何度も何度も聴いた。

名曲「ボヘミアン・ラプソディ」をクイーンのメンバーはあんなレコーディングは二度としたくないとインタビューで答えていたのを思い出す。それぐらい、オペラパートのボーカルの重ね録りは熾烈を極める大変さだったそうで、それは映画「ボヘミアン・ラプソディ」に出てくる。

ラストの方のあるシーンでは少しだけ目頭が熱くなる。

バンド経験者にはなるほどと思うシーンがたくさんあって、昔は「ユニット」といわず、「バンド」といい、「リハーサル」とは呼ばず、「練習」といっていたと思う。「バンドは家族だ」というセリフが何度も出てきて、ぼくは昔を思い出して少しぎくりとして、何かがぼくの胸に刺ささるかのようなのだ。

ラストで「ライブ・エイド」のライブシーンになだれ込む。このアフリカの飢餓を救うためのチャリティー・コンサートでミュージシャンはギャラなしで演奏したそう。ボブ・ゲルドフのそっくりさんも出てくる。そして、これまたぼくに近しい世代なら誰もが知っている名曲「伝説のチャンピオン」。昔、ノーベル賞作家の大江健三郎さんが「チャンピオン」のもともとの意味は「誰かのために戦う人」だと言っていたことを思い出したのだった。

「ボヘミアン・ラプソディ」は最高の音楽映画で、劇場で見て、大音量で聴くことをお勧めします。

映画『ボヘミアン・ラプソディ』公式サイト 大ヒット上映中!
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今月のぼくの歌う予定です。他にもオープン・マイクなどに出没します。遊びに来てね。

http://kysakai.lovemebaby.net
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安田純平さんの会見記「シリア拘束 安田純平の40か月」を読んだ。

アラブの内部のしかも監獄のような所での異邦の眼差しというようなことを感じ、考えた。安田さんは、ジャーナリズムがなくなることは絶対にないようにと願うと言っていて、ぼくもそれに同意するのは、事実を知らしめるということと、ぼくの感じた異邦の眼差しからしか人は気づきえぬこともたくさんあるような気がするから。さらに不遜なことを言えば、安田さんの幽閉生活はカフカの小説のようでもある。この強烈な体験をさらに掘り下げて何らかの形で文章にしてくれることを願います。

いや、その前に安田さんのPTSDが心配だ。今は安らかにお休みになられんことも願っております。







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Annの3枚目のアルバム"Ann As One"が届いていて、聴いています。聴きながら、何か「抵抗」というような言葉を思い出してしまう。川久保典彦さんのピアノと菅田典幸さんのドラムの鉄壁のバックでうたうスミちゃんとぼくが呼ぶ、スミ☆アヤコさんです。

スミちゃんのことは、彼女が歌い始めたころから知っているんだ。ここまで来るのが短かったような、長かったような。飾りっ気のない直球の心いっぱいのこれらの歌は、たくさんの人たちを励ましていると思う。もちろん、ぼくもです。また、ライブ、行くね。





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プロフィール
HN:
えいちゃん
性別:
男性
職業:
S.E.
趣味:
音楽
自己紹介:
音楽を演奏したり聴いたりするのが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。
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