えいちゃん(さかい きよたか)
えいちゃんのぶろぐ

ぼくにとってのアイルランドとはヴァン・モリソンやチーフタンズになるのだけど、ウィリアム・トレヴァーというアイルランド人の著したアイルランドを舞台にした短編集「アイルランド・ストーリーズ」を読んでみた。
北アイルランド紛争を通低音にした小さな物語たちが語りかけるのは、その紛争や、また差別による貧困によって心に傷を負った人の、静かだけど確かな響きをもつ小さな音楽やら歌、ブルーズのようであった。訳者の栩木伸明さんによればアイルランドは大英帝国の最古の植民地であったし、北アイルランド紛争とは、アメリカの公民権運動の影響を受けたカトリック系住民たちが差別撤廃のデモの行うようになったそデモにイギリス軍が治安維持ということで出動し、デモ行進していたグループに発砲し、13人の一般市民が殺害される所謂「血の日曜日事件」が起き、それを機に1997年までカソリック系とプロテスタント系の紛争状態となっていた。ウィリアム・トレバーの小さな物語は政治的にはカソリック系にもプロテスタン系にも身を置かないようなとこがあって、それは、アイルランドのぼくには地名も知らない町を彷徨うブルーズ・マンのようでもあるのだ。詩人イエーツや文豪ジェームズ・ジョイスの詩心や魂はトレヴァーに受け継がれている。がんばれ、アイルランド。

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